刑事弁護費用についてのお約束
1.接見回数を限定しない
法律事務所の中には,当初の着手金の中に含まれるものとしては接見回数○回まで,としているような事務所があります。
私はそのような費用の決め方には賛成できません。
接見は弁護活動の全ての基本となるものです。
そして接見がいつどれくらい必要になるかは,刑事手続の中で流動的で,最初に決めておくことは困難です。
弁護活動に必要なときに必要なだけ接見をしなくてはなりません。
もし,規定回数を超えて料金が発生するとすれば,弁護士は不要な接見をするかもしれません。
あるいは,依頼人の方が,○回を超えたら別料金が発生してしまうことを恐れて弁護士を呼ぶことを躊躇してしまうかもしれません。
つまり,接見回数を○回までとすることは適切な弁護活動を阻害する要因となってしまうのです。
ただし,遠隔地に接見にいかなければならないときは別途請求することがあります。
2.保釈などの身体拘束解放活動に別途着手金は発生しない
拘束されている状態から釈放させるために,保釈請求,勾留に対する準抗告などの手続を弁護士が取ることがあります。
法律事務所の中には,当初の着手金とは別に,身体拘束解放活動の着手金を要求する事務所があります。
しかし,私はひとたび弁護士として受任すればその依頼人の利益のためにありとあらゆる手段をとることが当然だと考えています。
たとえば事件は受任したけれども,保釈請求の着手金が払われないために保釈請求をしないとすれば,適切な弁護活動をしているとはいえません。
3.保釈金を基準として保釈の報酬を決めない
保釈を請求するために別途の着手金は必要ない,ということが私たちの約束です。
他方で,保釈が認められて釈放された,という場合にその報酬を別途取り決めておくことには反対しません。
しかしその場合でも,それは固定額であるべきで,保釈金の○%というように割合で決めることには賛成できません。
保釈金は裁判所に納めるお金ですが,もし割合で決めるということになるとすれば,弁護士にとっては少しでも保釈金が高い方が自分の報酬が高くなります。
依頼人やその家族としては,裁判所に納めなければならない保釈金の額は,低い方がよいはずです。
しかし自らの報酬が低くなってしまうような活動を一生懸命やるでしょうか。本来依頼者の利益を守るべき弁護士の立場と相容れない状態(利益相反)になってしまうのです。
4.示談交渉に着手金は発生しない
罪を犯したことを認めている場合,示談交渉は刑事弁護活動において中心的な活動の一つです。
被害者に謝罪する,被害を弁償する,被害者に宥恕してもらうことは依頼人の刑事処分を決める上で重要な要素だからです。
したがって,最初にもらう着手金の中に示談交渉は当然に含まれていると考えるべきです。
法律事務所の中には,示談交渉に別途着手金を設けたり,被害者ごとに着手金を要求する事務所がありますが,もし最初の着手金は払うけれども示談交渉の着手金が払われないと示談交渉を行わないのでしょうか。
もしそうだとすれば,弁護人の誠実義務(依頼人のためにできる限りの弁護活動をする義務)に違反するでしょう。
ただし,交渉の範囲を超え,民事訴訟に発展するような場合には,刑事事件の範囲内とはいえず,民事訴訟の着手金が発生するものと考えます。