3.判決後から執行猶予や仮釈放まで(刑の確定後)

罰金を払えない場合はどうなりますか?

強制執行や労役場に留置されることがあります。

罰金刑を科される場合,「被告人において右罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。」などと判決等で言い渡されます。
罰金がどうしても支払えない場合には,強制執行されることもありますが,労役場に留置されることになります。

労役場とは,法務大臣が指定する刑事施設に附置する場所です。
刑務所や拘置所内にあります。労役場留置とは,一定期間刑務所等ある施設内で身体拘束され,作業に従事することによって,罰金を払ったことにしてもらうという制度です。

刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律288条が,「懲役受刑者に関する規定を準用する」と定めているので,実質的に懲役刑と変わらないことになります。

なお,罰金が支払えない場合,直ちに労役場に留置されるわけではありません。
罰金を納付期限までに支払えないという場合には,納付の通知をしている検察庁の徴収事務担当者に事情を話して相談してみるべきでしょう。

期限までに罰金を納付せず,出頭もしない悪質な未納者は,自宅や勤務先に検察庁の担当者が予告なしに現れ,強制的に身体を拘束されることもあります。

執行猶予の場合,どのようなことに注意すべきですか?

執行猶予期間内にさらに罪を犯して禁固以上の実刑に処せられたりすると,執行猶予が取り消されてしまうので,十分な注意が必要です。

刑法26条は,次の場合には,執行猶予を取り消さなければならないと定めています。ただし,(3)のみ例外があります。

(1)猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ,その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
(2)猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ,その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
(3)猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。
たとえば,懲役1年,執行猶予3年の判決を言い渡されてから2年後に懲役2年の実刑判決を受けると,「必ず」執行猶予が取り消されてしまうので,執行猶予が取り消された懲役1年と新たに犯した罪の懲役2年,合計3年も刑務所に入らなければならなくなるのです。

また,同条の2は,次の場合には,執行猶予を取り消すことができると定めています。

(1)猶予の期間内に更に罪を犯し,罰金に処せられたとき。
(2)保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず,その情状が重いとき。
(3)猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ,その執行を猶予されたことが発覚したとき。
つまり,執行猶予の期間内に別の罪を犯して罰金刑に処せられたときは,裁判所の判断により執行猶予が取り消されることがあります(必ず取り消されるわけではありません)。

このように,執行猶予になっても取り消されることがあるので,執行猶予期間内は十分に注意する必要があります。

執行猶予期間が終わってしまえば,
その後の犯罪についても執行猶予になりますか?

執行猶予になる可能性はありますが,初犯の場合よりも執行猶予になりにくいといえます。

刑法27条は,執行猶予を取り消されることなく猶予期間を経過したときは,刑の言渡しの効力が失われると定めているので,同法25条の定める執行猶予の要件を満たしていれば,執行猶予になる可能性はあります。

しかし,実際の裁判では,もちろん初犯の場合と同様に執行猶予がつくわけではありません。

一度有罪の判決を受けていながら,新たに罪を犯したことになるのですから,初犯の場合と比較すると,真摯に反省していないと見られたり,再犯のおそれがあると判断されたりして,執行猶予がつきにくくなります。

特に同種前科がある場合には,執行猶予になりにくいといえます。

ただし,同種前科があるというだけで,執行猶予がつかないというわけではなく,たとえば,前回の判決から長期間,犯罪とは無関係に真面目に生活していた場合などであれば,執行猶予になる可能性もあります。

以上のとおり,執行猶予期間の満了後に別の罪を犯した場合,執行猶予になる可能性はありますが,実際には執行猶予になりにくいといえますので,早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

執行猶予中の再犯の場合,もう一度執行猶予になりますか?

原則として執行猶予にはなりませんが,1年以下の懲役・禁錮の言渡しを受け,情状に特に酌量すべきものがあるときには,再度の執行猶予になることがあります。

刑法25条2項は,執行猶予期間中に再び罪を犯してしまった場合であっても,
(1)1年以下の懲役・禁錮の言渡しを受け,
(2)情状に特に酌量すべきものがあるとき

には,再度の執行猶予にすることができると定めていますので,この場合には,もう一度執行猶予をつけてもらえる可能性はあります。

とはいえ,執行猶予期間中に再び罪を犯しているのですから,「情状に特に酌量すべきものがある」とはなかなか認めてもらえず,再度の執行猶予をつけてもらうことは非常に難しいといえます。

なお,執行猶予の期間中に保護観察に付されているときは,再度の執行猶予にすることはできません(同条2項但し書き)。

判決内容に納得できません。

判決に納得がいかない場合、上級の裁判所に不服を申し立てる制度が用意されています。

(1)控訴

地方裁判所または簡易裁判所で行われた裁判について、高等裁判所に対して見直しを求める手続です。

(2)上告

高等裁判所で行われた裁判について、最高裁判所に対して見直しを求める手続です。

控訴した結果、より重い刑が言い渡される可能性はあるのでしょうか。

被告人のみが控訴し、検察側が控訴しなかった場合は、第1審より刑が重くなることはありません。
しかし、検察側が控訴している場合には、より重い刑が言い渡される可能性もあります。

第1審で実刑判決を下されました。控訴審での保釈は認められますか。

第1審で実刑判決が言い渡されると、保釈の効力は失われ、法廷で身体を拘束され、そのまま拘置所に収監されることになります。
もっとも、この場合であっても、弁護士を通じて「再保釈」を請求することが可能です。

「再保釈」が認められた場合は、第2審である控訴審が行われている間は、通常の社会生活を送ることができます。
再保釈が許可された場合は、第1審で納付した保釈保証金に加えて、追加の保釈保証金を納入するのが一般的です。

在宅事件でしたが,実刑判決(懲役刑)が言い渡されました。
いつから刑務所に入らなければならないのですか?

判決が確定すると検察庁から呼び出しを受けて刑務所に入ることになります。
検察庁から呼び出しがあるのは,判決確定から10日くらい経ってからになることが多いようです。

刑務所に入るのは判決が確定してからです。
判決が確定すると検察庁から呼び出しがありますので,刑務所に入るのはそれからということになります。

なお,身体拘束事件の場合については,保釈されていなければ,判決が言い渡されるとそのまま拘置所で勾留され,判決確定後に刑務所に行くことになります。

実刑の有罪判決が下された場合、
いつから刑務所に入らなくてはいけないのでしょうか。

逮捕・勾留の後に起訴された事件(身柄事件)においては、第一審での実刑判決の言渡し後、拘置所に収容され(保釈されていた事件を含む)、判決の確定を待って、所定の刑務所に収監されます。
判決は、控訴の申し立てをしない限り、判決言渡しの日の翌日から14日後に確定します。
この場合、しばらくは拘置所での生活が続き、その間に面談や面接が行われ、収監先の刑務所が決定されます。
判決確定後は、「被告人」は「受刑者」になるため、拘置所での生活にも刑務所での生活に準じた規則が適用され、家族との面会や手紙のやり取りは著しく制限されることになります。

自宅にいる状態で起訴された事件(在宅事件)においては、実刑判決が確定した後、10日前後で検察庁から書面で呼び出しを受け、自らの足で検察庁に出頭した後、拘置所に収容されます。控訴後に保釈が認められた事件でも、同様の流れになります。

刑務所内ではどのようなことが行われるのでしょうか。

(1)「作業」

①受刑者に規則正しい勤労生活を行わせることにより、その心身の健康を維持し、勤労意欲 を養成し、規律ある生活態度及び共同生活における自己の役割・責任を自覚させる、②職業的知識及び技能を付与することにより、その社会復帰を促進することを目的として行われます。
木工や印刷、炊事・清掃、さらには資格取得を目指す「職業訓練」といったものがあります。

(2)「改善指導」

受刑者に犯罪の責任を自覚させ、社会生活に適応するのに必要な知識や生活態度を習得させるために必要な指導を行うものです。
薬物依存離脱指導・暴力団離脱指導・交通安全指導といったことも行われます。

(3)「教科指導」

更生や円滑な社会復帰のために必要な基礎学力が不十分である受刑者には、小・中学校の教科の内容に準ずる指導が行われます。
場合によってはさらに高度な指導がなされることもあります。

刑務所に入っている間、家族と会ったりすることはできますか。

原則として親族らとの面会が可能です。1回あたり30分程度とされています。
また、手紙の授受も可能です。
ただし、面会や手紙の授受の回数制限が設けられているほか、手紙の内容は事前に確認され、施設の管理運営に支障を及ぼすと判断されれば黒塗りされたり、授受が禁止されたりする可能性があります。
さらに、現金や日用品を差し入れることは原則誰でも可能です。
ただし、施設の管理運営に支障を及ぼすようなものは差し入れできません。

「仮釈放」とは何ですか。

仮釈放とは、刑期の3分の1以上を経過した者に、反省の様子が見られ再犯のおそれがないと判断された場合に、刑期満了以前の釈放を認める制度です。
刑期の3分の2を経過したころ仮釈放が認められることが多いようです。

仮釈放中は保護観察に付され、残りの刑期中特に問題を起こさなければ、残刑満了時点で刑の執行は終了となります。
仮釈放中に罪を犯したり、遵守事項を遵守しなかったりした場合は、仮釈放が取り消される場合があります。

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