1.逮捕・勾留から起訴されるまで(捜査段階)

⽬次

在宅事件なので,逮捕されたら弁護士を頼もうと思うのですが。

弁護人は身体を拘束をされている事件や起訴された事件だけしか付けられないわけではありません。
在宅事件でも弁護人が就任することが可能です。
そして,逮捕されていないからといって,これから先も逮捕されないとは限りません。

逮捕されてからでは被害者の方との示談など必要な弁護活動が遅れてしまう可能性があります。
逮捕や起訴される前だからこそ,自身も自由に行動でき,できることがあります。
早くから弁護人がついていれば,被害者の方との示談や情状立証をすることにより,不起訴を勝ち取れるかもしれないのです。
一日も早く弁護士に相談することをおすすめします。

警察から任意同行を求められた場合,弁護士に付いて来てもらえますか?

警察からの任意同行・出頭の要請にご不安がある場合は,弁護士が警察署に一緒に付き添い,事情聴取に際してのアドバイスやサポートをすることが可能です。

ただし,取調室の中まで弁護士が立ち会うことは警察からほぼ間違いなく許可されません。
弁護士の立会いが認められないことを理由に,任意同行・任意出頭を拒否することはもちろん可能ですが,それによって逮捕状を請求されてしまうおそれもあります。

なお,取調室での弁護士立会いが許可されない場合であっても,弁護士が警察署へ付き添うことによって,警察の対応が改善される可能性はあります。
例えば,30分毎の取調べの休憩を求め,その都度事情聴取の様子を聞き,対応をアドバイスすることができます。
弁護士が取調室の外のベンチに座っていますので,警察からひどいことをされたときでも大声で呼べばすぐに助けに行けます。

もし,ご本人のご事情で当日の任意同行・出頭ができないという場合は,弁護士から警察へ後日の出頭を希望する旨を伝えて,日時の交渉をすることも可能です。

警察や検察から呼び出しに応じなくてもかまいませんか?

任意での事情聴取ではありますが,仕事の都合などでどうしても行けない場合は必ず警察に連絡をし,日程の調整を願い出てください。
また,検察官からの呼び出しがあった場合には,警察での取調べ結果に基づいて,事件を起訴すべきか不起訴にすべきかの判断を行おうとしている段階にきている可能性があります。
警察や検察からの呼び出しに対して,理由もなく応じないと,逃亡や証拠の隠滅,事件の否認を疑われ,最悪の場合,逮捕につながってしまうおそれもありますので,注意してください。

なお,警察から出頭を求められた際,弁護人として担当警察官と交渉し,出頭日時を遅らせたこともあります。
都合が悪い場合も,弁護士に相談してみるとよいでしょう。

警察からの呼び出しに出向くと,そのまま逮捕されてしまうのですか?

警察から任意同行・出頭の要請を受けたからといって,必ずしも逮捕されるわけではありません。
警察が任意出頭を要請する理由としては,被疑者や参考人として事情を聞くために呼び出す場合と,逮捕を予定して呼び出す場合があります。

後者については,すでに逮捕状が出ていても,警察署の刑事が被疑者の自宅を訪れて連行しようとすると,近隣の騒ぎや迷惑になる可能性があることから,このような事態を避けるために,任意出頭・任意同行という形式を取るという意味があります。

また,被疑者を逮捕した場合,警察は逮捕後48時間以内に,被疑者の身体と事件関係書類を検察へ送らなければならず(送検),手続には時間制限が設けられています。

この時間制限の制約を避け,事情聴取の時間を有効に使うために,まずは逮捕でなく任意で出頭させ自白を取ろうとすることも多いのです。

このような警察の出頭要請に対してご不安がある場合,弁護士が警察署へ付き添い,事情聴取に際してのアドバイスやサポートすることが可能です。
例えば,予め身元引受書や雇用契約書を用意し,逃亡の可能性がないことをがないことを示して,逮捕を免れることもあり得ます。

逮捕回避のためにも,まずは弁護士に相談してみましょう。

警察や検察からの事情聴取にはどのように対処したらいいでしょうか。

取調べは数時間から半日かかることがあります。
十分に時間を確保して赴かれてください。
事情聴取だけで終わることもあれば,話した内容に基づいて調書が作成されることもあります。

取調べは,警察官や検察官が被疑者に質問を投げかける形で行われます。調書は,その回答を警察官や検察官がパソコン上でまとめることにより行われます。
最後に,警察官や検察官は作成した文面を読み上げますから,その内容が自分の話したことと異なる場合,間違ったニュアンスで記載されている場合には,速やかに申し出て訂正をお願いしてください。
事実と相違がなければ,署名・押印して構いませんが,異なる点があるのならば署名・押印してはいけません。

取調べが長時間に及ぶと疲労のあまり調書に署名・押印しがちですが,調書は証拠となって書類送検されますので,くれぐれも注意してください。

取調べ内容はどのように記録されるのでしょうか。

取調べでなされた会話のやりとりは、最終的に、書面にまとめられます。この書面を作成するのは捜査機関側です。
捜査機関は、作成した書面を被疑者に読ませ、あるいは読み聞かせます。
この書面は、被疑者が末尾にサインをすることで完成します。

この際大事なことは、書かれた内容を細かくチェックし、間違いがある場合には絶対にそのままサインをしないことです。
被疑者は、サインをする前に、一部分の削除や訂正、あるいは追加を求めることができます。
また、書かれている内容に納得がいかない場合には、サインを拒むこともできます。

捜査機関側の強い要求に応じて、間違いを正すことなくサインしてしまうことは大変危険です。
後にその書面は重要な証拠として扱われ、内容の訂正を行うことは非常に難しくなります。
だいたい同じような内容のことが書かれていても、表現方法のちょっとした違いで読み手の受け取る印象が大きく変わることもあります。

サインする前には、細かい部分にまで気を配って内容を熟読しましょう。
そして、途中で妥協することなく、納得がいくまでサインはしないようにしましょう。
ここでの対応の仕方についても、事前に刑事事件に強い弁護士による適切なアドバイスを受けておくことが非常に重要です。

取調べに応じた場合、全てを話さないといけないのでしょうか。

取調べでなされた会話のやりとりは、最終的に、書面にまとめられます。この書面を作成するのは捜査機関側です。
捜査機関は、作成した書面を被疑者に読ませ、あるいは読み聞かせます。
この書面は、被疑者が末尾にサインをすることで完成します。

この際大事なことは、書かれた内容を細かくチェックし、間違いがある場合には絶対にそのままサインをしないことです。
被疑者は、サインをする前に、一部分の削除や訂正、あるいは追加を求めることができます。
また、書かれている内容に納得がいかない場合には、サインを拒むこともできます。

捜査機関側の強い要求に応じて、間違いを正すことなくサインしてしまうことは大変危険です。
後にその書面は重要な証拠として扱われ、内容の訂正を行うことは非常に難しくなります。
だいたい同じような内容のことが書かれていても、表現方法のちょっとした違いで読み手の受け取る印象が大きく変わることもあります。

サインする前には、細かい部分にまで気を配って内容を熟読しましょう。
そして、途中で妥協することなく、納得がいくまでサインはしないようにしましょう。
ここでの対応の仕方についても、事前に刑事事件に強い弁護士による適切なアドバイスを受けておくことが非常に重要です。

取調べって怖いイメージがあるのですが…。

TVドラマなどで、狭い取調室で刑事さん達が机を叩いたり、被疑者の胸倉をつかんだり、はたまた大声でどなり散らしたり、さらには被疑者を殴ったり…といったシーンが見られることがあります。
しかし、取調べに際してなされる暴力行為は重大な違法行為です。暴力行為をした捜査官自身が罪に問われる可能性もあります。
また、捜査機関側が被疑者の供述を強要したり、「罪を認めれば刑を軽くしてやる」などと甘い言葉で供述を誘導するといったことも認められません。

実際には、捜査機関側による違法不当な行為は頻繁に行われています。
違法不当な行為などがなされた場合には、早急に弁護士に相談しましょう。
弁護士が直ちに内容証明郵便などによって、捜査機関の責任者に取調べの態様を抗議することで、捜査官が交代されるなどの措置が取られ、以後の違法捜査を防ぐことができます。

逮捕とは実際どのような手続なのでしょうか。

逮捕とは、最長72時間,被疑者の身体を拘束するものです。
逮捕されれば、警察署の留置場に入れられます。
逮捕の効力は最長72時間まで続くため、逮捕によって2泊3日の留置場生活を強いられることになります。

逮捕は、被疑者が逃亡したり証拠を隠したりすることを防ぐために行われます。
逮捕されている間は警察署の留置場に入れられ、取調べなどの際にはその都度取調室へ移動します。
行動の自由を奪い、被疑者の社会的名誉も傷つける可能性のある重大な捜査活動です。
多くの場合,逮捕された状態で長時間に及ぶ取調べが行われます。

逮捕には最長72時間という時間制限があります。
しかし、捜査機関及び裁判所がなお被疑者の身体を拘束しておく必要があると判断した場合は、逮捕に引続いて勾留される可能性があります。
勾留とは、逮捕に続く身体拘束をいい、その期間は最短で10日さらに10日,合計20日まで延長可能とされています。
したがって、一度逮捕されてしまうと、最長23日間,起訴されればさらに長期間自宅には帰れないことになります。

もっとも、弁護士に相談して適切な弁護活動を行えば、逮捕の時間制限が経過する前の釈放を実現し、または逮捕の後に10日以上勾留されることを阻止できる場合があります。
身体を拘束されている間は肉体的にも精神的にも大きなダメージを受けます。
また、長期に及ぶ欠勤・休学は、その後の社会復帰を非常に難しくします。
早期に弁護士に相談し、身体拘束の期間をなるべく短くするよう活動することが重要です。

逮捕とは実際どのような手続なのでしょうか。

逮捕は、被害者の身体を拘束するという重大な権利侵害を伴う処分であるため、一定の厳格な要件を満たした場合にのみ認められ、捜査機関が自由にこれを行うことはできません。

逮捕には以下の3種類のものがあります。
事前に裁判所の発行する逮捕状に基づいてなされる「通常逮捕」が原則です。「現行犯逮捕」「緊急逮捕」はあくまでも例外的に認められるものです。
逮捕は、身体の拘束という大きな負担を被疑者に与える捜査活動です。
そのため、手続は厳格に定められ、事前に裁判所のチェックを受けることが原則とされているのです。

もっとも,裁判所のチェックは形骸化しており,令状は事実上,請求すれば自動販売機のように出されています。

(1)通常逮捕

捜査機関が裁判所に「逮捕状」を請求し、裁判所がこれに応じると、捜査機関は被疑者を逮捕することができます。
裁判官は、証拠に照らして、被疑者が犯人であるという理由があるか、被疑者を逮捕する必要があるか(逃亡や証拠を隠す可能性があるか)を検討し、逮捕状を出すか否かを決定します。


(2)現行犯逮捕

現に犯行中の者や、明らかに犯行直後と思われる者については、逮捕状がなくてもその場で逮捕することが認められる場合があります。
現行犯の場合は、犯人であることが明らかで誤認逮捕の可能性が小さいこと、また、被害の拡大防止や犯人の身柄確保のためにすぐに逮捕する必要性が高いことを理由に、例外的に令状に基づかない逮捕が認められています。
現行犯逮捕は、捜査機関だけでなく一般の人でもできます。


(3)緊急逮捕

一定の重大犯罪については、犯人と疑われる充分な理由が認められる場合、逮捕状がなくても逮捕が認められることがあります。
ただこの場合には、逮捕後すぐに裁判官に逮捕状の請求をすることが必要です。


ここで大切なのは、被疑者だからといって必ず逮捕されるわけではないということです。
誤った逮捕(人違いなど)が許されないのは当然ですが、たとえ犯人であるとの疑いがあっても、逃亡や証拠隠滅の可能性がない場合に逮捕は認められません。
逮捕された、あるいは逮捕されそうというときには、本当にその逮捕は正当なものなのか、弁護士に相談することが有効です。

突然,家族が逮捕されてしまいました。
ほかの家族は何をしたらよいでしょうか。

ご家族が逮捕されたとの知らせが入った場合,あまりにも突然のことで,動揺されているかと思います。
まずは「どこの警察署」に,「どのような容疑」で,「いつ逮捕されたのか」を確認してください。

当事務所でご依頼を受けた場合は,ご家族が拘束されている警察署へ行き,ご本人と接見します。

まずは,ご本人の動揺や不安を取り除くため,お話を十分に伺い,今後どのような手続の流れになる可能性があるかについてご説明いたします。

私たち弁護士がご本人とお話することによって,この逮捕が果たして適法なのか,今後の手続の見込みがどうなるかなど,事態の正確な状況を把握することができます。

そして,決してあってはならない冤罪を防ぎ,早期に身柄を解放する活動をいたします。
早急に弁護活動を開始することが,日常生活を継続するための何より重要な鍵となるでしょう。まずはお気軽にご相談ください。

逮捕後はどうなるのですか。

(1)警察署において

逮捕の際には、①犯罪事実の要旨の告知を受けます。
どのような犯罪について逮捕されたのか説明を受けます。
次に,②弁護人選任権の告知を受けます。弁護人を選任する権利があることについて説明を受けます。
そして,③弁解の機会の付与をされます。
被疑者側の言い分を聞いてもらえます。その後、警察官らによって警察署に連行されます。

警察署には、衣類・洗面用具・書籍・現金などを持っていくことができます。
携帯電話については、留置場内で使用することはできませんが、家族・友人・弁護士などの連絡先の確認に役立つこともあり、持参しておく方が良いでしょう。

警察署に着くと、まずは指紋の採取・顔写真の撮影が行われます。
そしてそれに引続いて、取調べが行われます。

警察は、被疑者の取調べやその他の捜査の状況から、逮捕から48時間以内に、被疑者を引続き身柄拘束しておく必要性があるかないかを判断しなければなりません。
身体拘束の必要性がなくなれば釈放されることになります。
引き続いて身体拘束が必要と判断されれば、被疑者は検察庁へ送られます。


(2)検察庁において

再度弁解の機会が与えられ、身体拘束を継続するか否か判断されます。身体拘束の必要性がなくなれば釈放されますが、なおも拘束が必要と判断されれば、検察に送られてから24時間以内に「勾留請求」の手続がとられます。

勾留がなされる場合、被疑者は再び留置場に戻されます。
そこでの生活・取調べの様子は上記(1)と大きな違いはありません。
勾留期間中に、検察官は、被疑者を起訴するか否かを検討することになります。


細かい手続きの内容について捜査機関が丁寧に説明してくれるとは限りません。
その一方で、逮捕された状況下でなされる取調べで被疑所が話した内容は、後の裁判などで重要な証拠とされます。
逮捕された、あるいは逮捕されそうとなったら、できるだけ早い時期に弁護士に相談し、自分の持っている権利の内容や取調べへの対応の仕方について説明・アドバイスを受けることが大切です。

逮捕されると、外部との連絡はとれないのでしょうか。

逮捕されてしまうと、原則として、外部と連絡を取ることはできません。
所持している携帯電話は、ケースによっては証拠品として押収されてしまいますし、仮に押収されないとしても、留置場の中では携帯電話を使うことはできません。

外部との連絡は、弁護士を通じて行う必要があります。
弁護士を呼ぶ場合は、担当の警察官にその旨を伝え、警察官を通じて法律事務所に連絡を入れてもらうことになります。
そして、弁護士が警察署に面会に来た場合は、面会室でアクリル板越しに、弁護士と二人きりで話しをすることができます。
家族や友人らに伝えるメッセージがある場合は、面会に来た弁護士に伝言を頼むことができますし、所持品を誰かに手渡したい場合も、「宅下げ」という手続きにより弁護士に所持品を預けることができます。

家屋も面会できますが,時間が限られている上,接見禁止という処分がなされると,家族は面会できず,弁護士しか面会できなくなります。

また、警察官に頼めば、逮捕された事実を家族に伝えてくれる場合があります。
逮捕され所在不明になったことで家族に心配をかけたくないという方は、警察官に申し出て、家族に連絡を入れてもらうようにしましょう。

留置場での生活はどんなものですか?

基本的には居室と呼ばれる部屋の中で過ごしますが,取調べ等がある場合は留置場から外へ移動します。
留置場によって多少時間は異なりますが,日課が大まかに決められています。


一日の流れを説明しますと,

06:30
部屋の電気が点いて起こされます。布団は自分でたたまなければいけません。

07:00
居室で朝食を取ります。

07:30
運動場と呼ばれる小さな場所で運動をすることができます。

12:00
居室で昼食を取ります。

17:00
居室で夕食を取ります。
※入浴は週に2回程度,決められた時間に入ります。

21:00
就寝とされます。


このように,取調べ等がない場合は居室の中で過ごす時間がとても多いため,本などの差し入れが望ましいです。月に2回の健康診断もあります。

逮捕の事実は学校や会社に伝わりますか。

捜査機関が事件の内容について積極的に学校や会社に連絡をすることはありません。
ただ、捜査の関係上、学校や会社に問い合わせをする必要がある場合には、逮捕の事実が伝わってしまうことがあります。
また、長期間欠席・欠勤をすることで、結果的に逮捕の事実が学校や会社に発覚することもあります。
さらに、事件が新聞やニュースに取り上げられてしまったケースでは、逮捕の事実が学校や会社に伝わる可能性があります。

弁護士にご相談頂いた場合には、できる限り学校や会社に逮捕の事実が伝わらないよう、弁護士が捜査機関と交渉を行います。

逮捕されると、会社は解雇されてしまいますか。

(1)民間企業の場合

それぞれの会社によって、逮捕の時点で解雇となる、あるいは有罪判決を受けた時点で解雇となる、といったことが定められています。
一般的には就業規則の中に定めが置かれています。
なお、解雇の他にも様々な懲戒処分が設けられていることもあります。
逮捕されても有罪判決を受けなければ解雇しないと定めている企業も多いため、逮捕されても不起訴処分の獲得を目指して最後まで諦めないことが大切です。


(2)公務員の場合

逮捕の時点でただちに失職することにはなりません。
しかし、裁判で一定の有罪判決を受けると、法律上の欠格事由に該当し、公務員の立場を失うことがあります。
また、法律上の欠格事由には該当しないとしても、懲戒処分により免職となれば、公務員の職を失うことになります。
他方で、逮捕されても事件が不起訴処分で終了した場合は、有罪判決を受けていないため公務員の欠格事由には該当せず、また自主退職をしない限り職を失うことも少ないようです。

勾留の決定を阻止することはできますか。

弁護活動によって、勾留の決定を阻止できる場合があります。

まず、勾留の手続きは、検察官がこれを裁判官に請求するところから始まります。
そこで、弁護側としては、意見書を持参して担当の検察官に掛け合い、勾留を請求しないように説得を試みます。
その際は、あらかじめ被疑者の親族などから取得した身元引受書を提出し、被疑者を取り巻く状況を説明して、釈放しても逃亡する可能性がないことを訴えます。

次に、勾留の決定は、裁判官が行います。
弁護側としては、意見書を持参して裁判官に掛け合い、勾留を決定しないように説得を試みます。

さらに、一度決定された勾留でも、弁護側の準抗告という不服申立てが認められれば、その決定を覆すことができます。
最初の勾留決定は、裁判官が1人で行いますが、準抗告を申し立てた場合は、3人の裁判官が話し合って決めます。

勾留中に釈放される可能性はありますか。

弁護側が申し立てた勾留の取消請求や、勾留の執行停止が認められれば、勾留中であっても、直ちに留置場から釈放されます。

勾留の取消請求は、勾留決定後の事情の変化により勾留の理由や必要性がなくなった場合に認められます。
勾留決定後の事情の変化としては、例えば、新たに身元引受人が現れた、定まった住所が確保された、あるいは被害者との間に示談が成立したといったことが考えられます。
こうした場合には、弁護側の申し立てを受けた裁判官によって、勾留の取消しがなされる可能性があります。

勾留の執行停止は、一定の事情により勾留の執行を停止した方が相当と考えられる場合に認められます。
一定の事情としては、例えば、被疑者が病気治療や出産のため入院を必要とする、近親者の葬儀に出席する必要があるなどといったことが考えられます。
こうした場合には、弁護側の申し立てを受けた裁判官によって、勾留の執行が停止される可能性があります。
最近では,娘の結婚式に出席するために交流の執行停止が認められた例があります。

家族が逮捕・勾留されています。
差入れをしたいのですが,どんなものが必要なのでしょうか。

下着,衣服,ハンドタオル,歯ブラシ,本,雑誌,お金などがいいでしょう。
お金は自分で必要なものを購入できます。

差入れに際しては,事前に警察署の留置係に電話をして,差入れできるものを確認しておくとよいでしょう。
例えば,フードやゴム紐付きの衣服は自殺のおそれありとして差入れができなかったり、本・新聞の冊数や種類等についても制限があります。

また,接見禁止になっている場合は差入れできるものが厳しく制限されます。

接見禁止の場合,ご家族も面会できず,弁護人のみが接見できます。
このような状況ですと,社会とのつながりが遮断された状態になるため,弁護士が接見してお話をすることで,ご家族の様子などがわかり,ご本人も安心することでしょう。

「起訴」って何ですか。

起訴とは、捜査を進めた結果、検察官が、①被疑者の有罪の証明が可能で、かつ②この被疑者に刑罰を科すべきと考えた場合に、裁判所に対して、刑事裁判を行って刑罰を科すように求める手続をいいます。

検察官によって事件が起訴されると、「被疑者」は「被告人」という立場になります。
日本では起訴できるのは、原則として、検察官だけです。起訴されることで初めて裁判手続がスタートします。起訴はとても重大な手続なのです。

「不起訴」って何ですか。

不起訴とは、検察官が「今回の事件を起訴しない」と決める処分のことをいいます。

不起訴処分になれば、刑事裁判が行われることも、有罪判決が下されることもありません。
したがって、仮に罪を認め、逮捕や勾留されたとしても、不起訴になれば前科は付きません。
前科を付けたくないという被疑者の場合は、弁護士と相談の上、いかに確実に不起訴処分を獲得するかということが非常に重要になってきます。

不起訴処分とされる理由には以下のようなものがあります。


(1)「嫌疑なし」

捜査の結果、被疑者に対する犯罪の疑いが晴れた場合です。
捜査が進むにつれ、真犯人が判明したり、被疑者の行為が犯罪にはあたらないことが分かったりすることがあります。
嫌疑なしと判断されるためには、弁護士と相談の上、真犯人の存在や被疑者自身のアリバイの存在などを主張していくことが有効です。


(2)「嫌疑不十分」

捜査の結果、裁判において有罪の証明をするのが困難と考えられる場合です。
証拠が十分に集められないといった場合です。
嫌疑不十分と判断されるためには、弁護士と相談の上、捜査機関側が持っている証拠の量や内容を調査し、捜査機関側と交渉していくことが有効です。


(3)「起訴猶予」

有罪の証明が可能な場合であっても、検察官の判断によって不起訴とすることが認められています。
犯罪の重さ、犯人の性格・年齢・生いたち、犯行後の事情,例えば被害弁償の状況などを考慮して不起訴とされる場合があります。
通常は、被害者に対する弁償や謝罪が十分に行われ、被害者と示談が成立しているなど場合に起訴猶予となるケースが多いです。
そのため、起訴猶予となるためには、早い段階から弁護士を付けて、被害者への対応を充実させること大切です。

具体的な起訴手続の流れを教えて下さい。

(1)公判請求の場合(刑事裁判になり、法廷に出る必要がある場合)

捜査を終えた検察官は、「起訴状」を裁判所に提出します。
そして、裁判所は、検察官から受け取った起訴状の写しを、被告人に郵送します。
この起訴によって、「被疑者」は「被告人」という立場に変わります。
公判請求には、通常の裁判を求めるものと、必ず執行猶予付きの判決が下される即決裁判を求めるものがあります。

被告人が起訴前からすでに勾留されている場合、起訴後も原則としてその状態は変わりません。
つまり、引き続き留置場や拘置所で生活しなければならず、保釈が認められない限り、裁判の期日には、勾留されている場所から裁判所へ出頭することになります。

被告人が勾留されていない在宅事件の場合は、裁判の期日には、自宅から裁判所に出頭することになります。


(2)略式命令請求の場合(法廷に出ないで罰金刑を受ける場合)

捜査を終えた検察官が、「起訴状」を裁判所に提出する点は、上記と同様です。
もっとも、略式命令請求は、被疑者の異議がないことが条件です。
そのため、検察官は、これから起訴しようとする被疑者に対し、略式手続の内容を説明し、この手続によることに異議がないかを確認する必要があります。
そして、被疑者に異議がないことの同意書にサインを求め、これを起訴状と一緒に裁判所に提出し、略式命令を請求します。

裁判所は、検察官から送られた記録をもとに、事件が有罪であることを確認し、罰金を納める旨の命令を出します。裁判所への出頭は必要ありません。
判決の内容に不服がある場合、略式命令を受けた被告人又は検察官は、略式命令の告知を受けた日から14日以内に、正式裁判を請求することができます。

起訴は避けられないとしても、簡易な手続きで済ませられないでしょうか。

通常の起訴ではなく、略式請求をされた場合は、裁判所に出頭する必要はなく、法廷で裁判を受ける必要もありません。

略式請求は、「簡易裁判所の管轄に属する」「100万円以下の罰金又は科料を科しうる」事件で、「被疑者に異議がない」場合に限って行われます。
簡単に言い換えれば、事案軽微で、被疑者が罪を認めており、罰金刑を科すのが相当な事件に限って認められる手続きです。

普通は、通常の起訴をされる事件でも、弁護活動を通じて示談がまとまったことで、簡易な起訴(略式請求)に切り替わるケースもあります。
そのため、傍聴人のいる中で刑事裁判を受けたくないという方は、素直に事実を認めて反省し、刑事事件に強い弁護士を通じて被害弁償などの措置を講じていくことが大切です。

警察から在宅事件の扱いになったと言われました。起訴はされませんよね?

身体が拘束されているから起訴されて,在宅事件であるから不起訴になるというわけではありません。
つまり,逮捕・勾留されている人だけが起訴されるわけではない点に注意してください。
一般的には,身体拘束事件よりも在宅事件の方が処罰が軽くなることが予想されますが,在宅事件であっても起訴されることがありますし,身体拘束事件であっても不起訴になることもあります。

自首しようか迷っています。自首すると刑は軽くなりますか?

自首をすると,刑が減軽されることがあります。

刑法には,「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる」と定められており(42条),裁判所の判断により刑が減軽されることがあります。
一部の罪を除き,必ず減軽されるというわけではありません。

刑法上の自首とは,「犯人が捜査機関に自発的に自己の犯罪事実を申告し,その訴追を含む処分を求めること」と解されています。
たとえば,捜査機関の取調べに対して自白したというだけでは「自首」には当たりません(大判昭12年3月20日)。
職務質問に際して当初は犯罪事実を申告する意思がなく,弁解した後に自供したような場合も「自首」には当たりません(最判昭29年7月16日)。

また,犯罪事実も犯人も判明しているが単にその所在が不明だというだけの場合,たとえば,警察に指名手配されて逃げ回っていたような場合に自ら捜査機関に出頭しても,刑法上の「自首」には当たりません(最判昭24年5月14日)。

もっとも,刑法上の自首にあたらなくても,捜査機関に対し自ら申告したという事実が,量刑において有利な事情として考慮されることはあります。
罪を犯したことが間違いないのであれば,自首も含めてどのような対応をするべきか,まずは弁護士に相談してみるのがいいでしょう。

被害者と示談できれば,起訴されずにすみますか?
起訴後に示談できた場合には,刑事裁判はどうなりますか?

示談が成立すれば,起訴されずにすむこともあります。
また,起訴されたとしても,有利な事情として刑が軽くなる可能性があります。

まず,被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪の場合には,既に告訴されていたとしても,示談の際に,「告訴取消書」を被害者に作成してもらい,告訴の取下げをしてもらえれば,起訴されないことになります。

親告罪以外の犯罪の場合,示談が成立したからといって必ず不起訴になるわけではありません。
しかし,検察官が起訴するべきか不起訴にするべきかを判断する際に,示談が成立していることは,被疑者にとって最も有利な事情の一つとなりますので,不起訴になりたいのであれば,示談を成立させることが非常に重要になってきます。

また,既に起訴されている場合であっても,裁判所が量刑を判断する際に示談が成立していることは,被告人にとって非常に有利な事情として考慮されることになります。

なお,示談を成立させるために精一杯努力したけれども,示談成立に至らなかった場合であっても,示談成立のために努力したことが有利な事情として量刑で考慮されることもあります。

このように,示談は被疑者・被告人にとって非常に有利な事情になりますので,早めに弁護士に相談するべきでしょう。

被害者と示談したいのですが,被害者の連絡先はどのようにしたら教えてもらえますか?

加害者本人が警察や検察に被害者の連絡先を問い合わせても教えてもらえないことがほとんどですので,弁護士に依頼して被害者の連絡先を教えてもらいましょう。

捜査機関は,加害者に連絡先を教えてもかまわないか事前に被害者に確認しますが,被害者は加害者に住所や電話番号などの連絡先を知られたくないものですし,加害者と直接話をするのも避けることがほとんどです。
連絡先を教えることに反対することがとても多いのです。

そこで,被害者と示談したい場合は,弁護士に依頼するのが望ましいといえます。
弁護士に依頼すれば,被害者も加害者に連絡先を知られずに示談交渉をすることができますし,加害者と直接話をせずに示談交渉を進めることができるので,連絡先を教えてもらえることがあります。
もちろん,これも被害者次第で,弁護士にも連絡先を教えない被害者も多いです。

なお,捜査機関が被害者の連絡先を教えてくれないからといって,加害者が被害者の連絡先を入手しようとすると,場合によっては「お礼参り」といって,被害者に更なる危害を加えようとしていると疑われるおそれもありますので,その意味でも弁護士に依頼するべきでしょう。

国選弁護人を私選弁護人に変更することは可能ですか?

もちろん,変更は可能です。
新たに私選弁護人を選任すると,これまで就いていた国選弁護人は裁判所によって解任されることになります。

刑事事件は時間との勝負です。
国選弁護人にご不安がある場合には,早い段階で私選弁護人を選任することをおすすめいたします。

告訴,告発,被害届は何が違うのですか?

どれも捜査機関に犯罪の被害に遭ったことを申告するという点で共通していますが,「犯人の処罰を求める意思表示が含まれるかどうか」という点が異なります。

被害届は被害者が警察署等に提出しますが,犯罪事実の申告に過ぎませんので,これにより何らかの法的な効果が生じるわけではありません。
捜査するか否かは警察の判断となります。

告訴は被害者または法定代理人や親族等の告訴権者が,警察や検察等の捜査機関に対して犯罪事実を申告し,犯人の処罰を求めるものです。
そのため,告訴を受理した捜査機関は捜査を開始しなければなりません。

告発は,被害者や告訴権者ではない第三者が行う告訴と理解してください。

© 私はあなたのみかたです – 弁護人橋本太地